犬と猫の胆泥症・胆石症について┃特徴的な症状が現れることがほとんどない怖い病気!?

愛犬愛猫にとって、胆嚢は消化に欠かせない胆汁を生成・貯蔵する重要な器官です。胆汁は通常、サラサラとした液体で、脂肪の消化吸収を助ける役割を担っています。しかし、胆汁がドロドロ状態の「胆泥」や固形の「胆石」が胆嚢に溜まってしまうと、胆泥症や胆石症という病気を発症し、愛犬愛猫に大きな苦痛を与えてしまうことがあります。

今回は、犬と猫の胆泥症(胆石症)の原因、症状、治療方法などについて解説していきます。

胆泥症・胆石症の違い

胆泥症と胆石症の主な違いは、胆汁の状態にあります。

・胆泥症:胆汁がドロドロ状態(泥状)で、比較的柔らかい物質です。
・胆石症:胆汁が固形(石状)で、物理的に固い結晶です。

胆泥症が進行すると、胆石症に発展することがありますが、両者は異なる段階の病態です。

症状

胆泥症や胆石症は、多くの場合目立った症状を示さないことがあります。しかし、病状が進行すると以下のような症状が現れることがあります。

嘔吐
食欲不振
腹痛
下痢
黄疸
発熱

さらに重症化すると胆嚢や胆管が破裂し、腹膜炎を引き起こす恐れがあります。この状態になると、命の危険があるため緊急の治療が必要になります。

原因

胆泥症・胆石症の原因はまだ全て解明されていないものの、以下のような原因が考えられます。

胆嚢炎

胆嚢が細菌感染を起こしたり、他の臓器の炎症が波及したりすることで発症する病気で、これが胆汁の性状に大きな悪影響を与えます。

内分泌疾患

特に副腎皮質機能亢進症甲状腺機能低下症などの内分泌疾患は、胆汁の流れを悪化させ、胆泥や胆石の形成を促進することがあります。

遺伝的要因

ミニチュア・シュナウザー、コッカー・スパニエル、シェットランド・シープドッグなどの犬種は、遺伝的に脂質代謝異常や高脂血症などを起こしやすいため、胆泥症や胆石症のリスクも高くなっています。

診断方法

胆泥症・胆石症は、以下の検査で診断されます。

・身体検査
腹部の触診を行い、痛みや膨満感の有無を確認します。黄疸が疑われる場合は、目や皮膚の色もチェックします。

・血液検査
肝臓や胆嚢の機能を評価するために、肝酵素値やビリルビン値を測定します。また、高脂血症や内分泌疾患など原因となる他の疾患がないか確認します。

・超音波検査
胆泥症の場合、愛犬や愛猫の姿勢を変えた際に胆泥がゆっくりと移動するのを確認できます。胆石症の場合は、胆石の大きさや数、胆のうの破裂や漏れがないか確認します。

治療方法

症状が軽度であれば、低脂肪食や胆汁の分泌を促す食事療法や薬物療法を行います
また、胆嚢炎や内分泌疾患など他の病気が原因である場合は、これらの疾患の治療を同時に行うことで、胆泥症、胆石症の再発や進行を防ぐことが可能です。

なお、食事療法や薬物療法で効果を示さない場合、あるいは症状が重度の場合には、手術を検討します。

予防法やご家庭での注意点

胆泥症・胆石症を完全に予防することはできませんが、日常生活の中でいくつかのポイントに注意することでリスクを減らすことができます。

まず、定期的な運動は胆嚢の機能を維持し、胆汁の流れを促進するのに役立ちます。犬の場合は毎日の散歩が効果的であり、猫の場合は遊び時間を設けることで運動不足を解消することができます。

また、食事管理も重要な予防策の一つです。高脂肪食は胆石の形成を促進するため、バランスの取れた食事を与えましょう。

定期的な健康チェックも胆泥症や胆石症の早期発見に重要です。少なくとも年に一度は獣医師による定期健診を受けることが推奨されます。特に高齢の犬猫やリスクの高い犬種は、より頻繁な健診が必要です。自宅でも日常の行動や食欲、便の状態などを注意深く観察し、異変を感じたら早めに動物病院で相談することが重要です。

まとめ

犬や猫の胆泥症および胆石症は、早期発見と適切な治療が非常に重要な疾患です。これらの疾患は初期には目立った症状を示さないことが多いため、飼い主様は日常的に愛犬愛猫の様子を確認することと定期的な健診が欠かせません。特に、食欲不振や嘔吐、下痢といった初期症状を見逃さず、早めに動物病院を受診しましょう。

栃木県宇都宮市にある『さかきばら動物病院』
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