愛犬や愛猫が耳を掻きむしったり、頭を振ったりしているのを見たことはありませんか?もしかしたら、それはマラセチア性外耳炎かもしれません。マラセチア性外耳炎は、マラセチアという真菌(カビ)の異常増殖が原因で起こり、耳垢の増加やかゆみ、異臭などの症状が現れます。適切な治療を行わなければ、慢性化したり、他の病気を引き起こしたりする可能性もあるため、早期発見と治療が重要です。
今回は、犬と猫のマラセチア性外耳炎の原因、症状、治療方法などについて解説していきます。
症状
主な症状は以下の通りです。
・黒い耳垢の増加
・耳からの異臭
・耳の赤みや腫れ
・かゆみや不快感から頭を振る
・耳介の肥厚
これらの症状が愛犬や愛猫に現れたら、早めに動物病院を受診することが大切です。放置すると、耳の奥の鼓膜に炎症が波及し、中耳炎や内耳炎を引き起こす可能性もあります。
原因
マラセチア菌は、犬と猫の皮膚表面に常在している菌ですが、皮脂を好むため、皮脂の多い耳で増殖しやすくなります。マラセチア菌の増殖を促進する要因としては、以下のようなものが挙げられます。
皮脂の過剰分泌
脂漏症を起こしやすい犬種(アメリカン・コッカー・スパニエル、ウエストハイランド・ホワイト・テリア、シー・ズーなど)や、肥満、アレルギーなどの皮膚病がある場合、皮脂の過剰分泌によりマラセチア菌が増殖しやすくなります。
外耳道の湿潤
湿度が高い環境や、耳垢が溜まりやすい状態になると、外耳道が湿潤になり、マラセチア菌が増殖しやすくなります。
免疫力の低下
ストレス、加齢、基礎疾患などによって免疫力が低下すると、マラセチア菌に対する抵抗力が弱くなり、発症しやすくなります。
診断方法
皮膚炎を起こしている部分にプレパラートやセロハンテープを当て、そのサンプルを特殊な染色液で染色します。その後、顕微鏡で観察し、雪だるまのような特徴的な形をしたマラセチア菌が見つかるか確認します。
また、耳鏡を使って耳の奥まで詳細に観察する耳鏡検査も行います。
さらに、必要に応じて耳垢を培養して菌の種類や数を特定する培養検査が行われることもあります。
治療方法
まず、専用の耳洗浄液を使って耳の中を綺麗にします。次に、マラセチア菌に対する効果的な抗真菌薬や抗炎症薬の点耳薬を使用します。また、症状がひどい場合は内服治療を行うこともあります。
もしアレルギーが原因である場合は、食事の見直しやアレルゲンの除去が必要です。
再発も多いため、治療後も薬用シャンプーによる定期的な薬浴が必要な場合もあります。
予防法やご家庭での注意点
日頃から、定期的に耳の中に異常がないか確認したり、耳掃除をして耳垢を溜めないようにしましょう。
また、皮膚が乾燥しすぎると皮膚のバリア機能が弱まったり、皮脂が過剰に分泌されてしまい、マラセチア菌の増殖を助けてしまうことがあります。そのため、適度な保湿も重要です。具体的な方法については、獣医師に相談することをおすすめします。
なお、食物や環境にアレルギーがある場合は、可能な限りアレルゲンを避けるようにしましょう。耳の中をしっかり乾かすことも重要で、水遊びやシャンプー後は耳の中をよく乾かすようにしましょう。
まとめ
マラセチア性外耳炎は犬や猫にとって非常に不快なだけでなく、放置すると中耳炎や内耳炎などの深刻な病気を引き起こす可能性もあります。日頃から耳のケアを怠らず、異常が見られた場合は早めに獣医師に相談することが大切です。
栃木県宇都宮市にある『さかきばら動物病院』
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