膝蓋骨脱臼（パテラ）は、チワワ、ヨークシャーテリア、ポメラニアンなどの小型犬種によく見られる疾患です。膝蓋骨が正常な位置から外れることで発症し、痛みや跛行（正常な歩行ができない状態のこと）、さらには関節の損傷を引き起こすことがあります。
今回は、膝蓋骨脱臼の原因から予防法まで詳しく解説していきます。
原因
膝蓋骨脱臼の原因は、大きく分けると先天的要因と後天的要因の２つに分けられ、遺伝、外傷、発育異常など、さまざまな要因で起こります。
先天性要因とは、大腿骨や脛骨の形状の異常や遺伝的素因など、生まれつきのものや犬の生後間もない時期に発症するものを指します。
例えば、生まれつき大腿骨や脛骨の形に異常があり、それが膝蓋骨の動きに影響を与える場合、これらは遺伝的要因が関係していると考えられています。
特に、先述したチワワ、ヨークシャーテリア、ポメラニアンなど、特定の犬種で多く見られる理由は、こうした遺伝的要因が関係していると言えるでしょう。
一方、後天的な要因とは、外傷や怪我、関節炎など、膝関節の安定性に影響を与えるような要因を指します。
例えば、捻挫、骨折などの膝関節の損傷は、膝頭を支える靭帯、腱、その他の構造にも損傷を与えて不安定になり、膝蓋骨脱臼のリスクが高くなります。
症状
膝蓋骨脱臼の症状としては、主に以下が挙げられます。
・足を引きずる、跛行する
・スキップのような走り方をする
・後肢を十分に伸ばせない
・痛みや違和感がある
・活動量の低下 など
また重症の場合、関節が炎症を起こして腫れたり、普通に歩いたり、走ったりすることができなくなることもあります。
診断
膝蓋骨脱臼の診断は、触診によって膝蓋骨が外れていることを確認します。また、歩行の様子を調べる歩行検査や、膝関節の具体的な状態を見るためにレントゲン検査も実施されます。
膝蓋骨脱臼で見られる歩行の異常は、他の疾患で見られることもあるので、正確な検査と診断が不可欠です。
治療
膝蓋骨脱臼の治療は主に内科的治療と外科的治療に分けられます。
軽症の場合は、安静と抗炎症剤の服用で症状が緩和されることがあります。具体的には痛みや炎症を抑える非ステロイド性抗炎症薬（NSAIDs）、膝関節周囲の筋肉を強化する理学療法、関節への負担を軽減する体重管理などを行います。
外科的治療を選択するかどうかは、グレード（重症度）や年齢、症状の有無などによって判断します。
予防
膝蓋骨脱臼は、遺伝や発達の異常によって起こることが多いため、予防は困難です。しかし、健康的な体重を維持し、定期的に適度な運動をすることでことで、関節を丈夫に保ち、怪我のリスクを軽減することができます。
また、膝関節に負担をかけるフローリングの床や、高いところから飛び降りる状況を作らないように工夫することも大切です。
まとめ
愛犬に膝蓋骨脱臼の疑いがある場合は、できるだけ早く獣医師の診察を受けることが重要です。適切な診断と治療により、ほとんどの症例で健康で幸せな生活を送ることができます。
本記事で解説したような症状が愛犬に見られたら、当院までお気軽にご相談ください。
栃木県宇都宮市にある『さかきばら動物病院』
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