愛犬の体重増加や脱毛に要注意!クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)の原因と症状

愛犬の体重増加や脱毛、実は深刻な病気のサインかもしれません。これらの症状を含む副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)は、有病率が0.3%とされている犬によく見られる内分泌疾患の一つです。

今回は犬の副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)の原因、症状、治療方法などについて解説していきます。

クッシング症候群とは?

クッシング症候群は、副腎から分泌されるホルモンであるコルチゾールが過剰に分泌される病気です。コルチゾールは、体の様々な機能を調節する重要なホルモンですが、過剰になると、体毛の脱毛、肥満、糖尿病、高血圧など、様々な症状を引き起こします。

また、クッシング症候群の原因は主に3つあります。

下垂体性クッシング症候群
下垂体は脳にある小さな器官で、ACTHというホルモンを分泌します。ACTHは副腎を刺激してコルチゾールを分泌させますが、下垂体の腫瘍があるとACTHが過剰に分泌され、クッシング症候群を引き起こします。

副腎性クッシング症候群
副腎自体に腫瘍ができると、コルチゾールが過剰に分泌され、クッシング症候群を引き起こします。

医原性クッシング症候群
コルチゾールと似た働きをするステロイド薬(例:プレドニゾロン)を長期間または大量に投与した結果、発症します。

クッシング症候群の主な症状

クッシング症候群は通常、中高齢の犬に見られる病気で、主な症状は以下の通りです。

多飲多尿
広範な脱毛(または薄毛)
皮膚の石灰沈着
腹部膨満(太っておらず背骨や肋骨は触れるのに、お腹だけたるむ)
食欲旺盛
元気消失

また、糖尿病や膵炎、骨粗鬆症、胆嚢粘液嚢腫などの病気に発展し、命の危険につながる可能性もあります。

クッシング症候群の診断方法

クッシング症候群の診断は、様々な検査を組み合わせて行います。

・身体検査
お腹周りの膨らみ具合や皮膚、毛並みの状態などを確認します。

・血液検査(ACTH刺激試験、デキサメサゾン抑制試験)
血液検査では、コルチゾールやACTH(副腎皮質刺激ホルモン)のレベルを測定します。これにより、ホルモンバランスの乱れを確認します。

・尿検査
尿糖や尿蛋白などを測定します。

・超音波検査
副腎の大きさや形状を詳細に調べ、腫瘍の有無を確認します。

クッシング症候群の治療法

治療には内科療法と外科療法の2つの選択肢があります。

内科療法
トリロスタン(アドレスタン)という副腎皮質ホルモンの合成阻害薬を使用します。薬の量が適切ではないと副腎皮質機能低下症になる可能性があるため、定期的にホルモン値や電解質を血液検査でモニタリングしながら服用します。

副腎皮質機能低下症(アジソン病)については、こちらをご覧ください

外科療法
副腎腫瘍が原因の場合や一部の下垂体腫瘍が原因の場合、外科的に摘出します。ただし、術後は副腎皮質ホルモンが分泌されなくなるため、薬での補充が必要となり、治療は生涯続きます。

早期発見と早期治療の重要性

クッシング症候群は、残念ながら完全な予防方法はまだ確立されていません。

そのため、定期的に健康診断を受けることで、クッシング症候群を早期に発見することができます。特に中高齢の犬は、年に2回定期健診を行い、気になる症状があれば早めに動物病院を受診してください。

また、ご家庭での食事管理や適度な運動がホルモンバランスを整えるのに役立ちます。特に、コルチゾールの過剰分泌がインスリンの作用を抑制するため、二次性の糖尿病が発生することがあります。しかし、治療によりコルチゾール値がコントロールされると、自然に血糖値が下がるため、インスリン注射が不要になる場合もあります。

まとめ

クッシング症候群の治療薬であるトリロスタンは、以前は海外から取り寄せる必要がありましたが、現在では国内で販売されているため、治療がしやすくなりました。愛犬に気になる症状がある場合は、お気軽にご相談ください。

栃木県宇都宮市にある『さかきばら動物病院』
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