愛犬が最近あまり動かなかったり元気がなかったりすることはありませんか?
もしかしたら甲状腺機能低下症という病気を発症しているかもしれません。
甲状腺機能低下症は犬も猫もどちらにも起こりますが、特に犬での発生が多い疾患です。犬の0.2~0.8%でみられると報告されており、甲状腺機能低下症は犬の内分泌疾患ではよく発生する疾患の一つです。
甲状腺は、首にある小さな臓器で、体の代謝を調整するホルモンを分泌します。しかし、何らかの原因でこのホルモンの分泌量が減ってしまうと、様々な不調が現れます。
今回は、中高齢の犬で特に多くみられる甲状腺機能低下症について、症状、原因、診断方法、治療方法、予防法まで詳しく解説します。
症状
甲状腺機能低下症により代謝の低下が起こることで下記のような様々な症状を引き起こします。
・肥満もしくは体重増加
・運動しなくなる
・元気がなくなる
・体温が低い
・昏睡
・脱毛
・被毛粗剛
・色素沈着など皮膚への影響
「悲しい顔」といわれるように目じりが下がって全体的に顔が下がってくるのも特徴的な症状としてみられることがあります。
また、徐脈や筋肉の虚弱(ふらつきなど)など心血管系や神経・筋系などにも影響がでることも稀にあります。
猫は脱毛、肥満もしくは体重増加など代謝や皮膚に関連した症状がみられます。
原因
犬の場合は下記の2つに大きく分類されます。
・自己免疫異常:甲状腺を自分の免疫システムが攻撃する
・特発性:原因不明に甲状腺が小さくなる
他にも、甲状腺ホルモンの分泌は頭の下垂体という部分からでるホルモンで調整されているため下垂体など脳が原因となる場合や腫瘍が原因の可能性もあります。
猫の場合は、医原性(医療の過程で引き起こしてしまうもの)が原因であることが多いです。
診断方法
血液検査で甲状腺ホルモンを測定するのが一般的です。甲状腺ホルモン(T4)が低値であれば、甲状腺機能低下症と診断されます。
しかし、他の病気や薬などの影響で見かけ上、甲状腺ホルモンが低くなっており、甲状腺機能低下症にみえる場合があります。そのため、飼い主様による普段の愛犬の様子の情報も参考に判断します。
また、他にも画像検査を行って脳に異常がないかを調べたり、甲状腺の様子を確認したりすることもあります。
治療方法
不足している甲状腺ホルモンを補充する薬を投与する内科治療が基本です。完治させることは難しいため、一生涯にわたって投薬することで症状を改善し、愛犬・愛猫が快適に過ごせるようにサポートします。
腫瘍が原因の場合は、外科手術や放射線治療も行う場合があります。
予防法やご家庭での注意点
原因がわからなかったり、自己免疫疾患が原因であったりすることから予防は困難です。しかし、中高齢の犬で多く発症するため、定期的な健康診断で早期発見・早期治療に努めることが大切です。愛犬が少しでも元気がなかったり、あまり動かなかったりする様子が見られた場合は、年齢のせいと思い込まず病院に相談することをおすすめします。
まとめ
甲状腺機能低下症は、適切な治療でうまく付き合っていくことができる病気です。愛犬・愛猫の健康を守るために、正しい知識を持ち、獣医師と協力しながら適切な対応をしていきましょう。
栃木県宇都宮市にある『さかきばら動物病院』
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